今年のサツマシジミの強制採卵について

例年のように10月下旬に三重県度会郡で採集したサツマシジミの母蝶をいつもの産卵容器にセットして強制採卵を試みました。しかし、今年はどうも母蝶のご機嫌が悪いようで中々産卵しません。産卵用の植物は、毎年多くの産卵実績があるキヅタの蕾~実とカナメモチの実なのですが、3週間近く経っても殆ど産卵していません。この間、産卵容器の位置を変えたり、太陽光を当てたり、LEDランプの光量を変えたり、色々なことを試しましたが駄目でした。

結局、4頭いた母蝶が、一頭また一頭と亡くなり、最終的には採集から3週間後の11月17日に全ての母蝶が死んでしまいました。この間に確認できた卵は7個で、キヅタに5卵、カナメモチに2卵の実績でした。このように全く産卵していないわけではなく、何かの条件が合致した時には産卵しているようなのですが、残念ながらその要因が全くわかりません。

唯一、例年と条件が違うことは、産卵用のキヅタの産地です。例年は母蝶採集地の近くで生育しているキヅタが、丁度この時期に開花しているのでそれを使っていましたが、今年はそのキヅタに全く花芽が無かったので、地元(滋賀県)で採集したキヅタの花芽を使いました。カナメモチの実は昨年も今年も地元のものですが、キヅタの補完的な産卵用植物としての利用なので、もともと産卵数はそれほど多くはありません。

今年はもう母蝶採集の予定はないので、要因解明は来年以降の課題となりました。後は産卵された7卵を大事に育てて、大型で奇麗な低温期型のサツマシジミをできるだけ多く羽化させたいと思います。

キヅタの実に産み付けられた卵(孵化済)
カナメモチの実に産み付けられた卵(孵化前)

ビワの蕾に移動させた幼虫です。

サツマシジミはこの若齢幼虫の段階で死んでしまう個体が多いのでなるべく目を離さず大事に育てていきたいと思います。中齢になると死亡率が大きく下がるのでそれまでの辛抱です。年明けには画像のような大型で奇麗な低温期型のサツマシジミが羽化すると思いますので、楽しみです。